手仕事の日本

 

手仕事の日本

手仕事の日本

 

 民藝運動で活躍された柳宗悦氏の著作です。タイトルからもわかる通り、日本各地の民藝を紹介したものです。各地域の風土に根差した手仕事を丹念に拾っており、よくぞここまで蒐集したものだと感心します。しかも今ではこの本も電子書籍で無料で読めてしまうなんて良い時代ですね。

 

本書が書かれたのは戦中とありますが、戦争によって飛散してしまったとのこと。戦後改めてまとめたのが本書とのことです。しかし本書を読んで行くと宗悦氏が絶賛した民藝の手仕事の数々は最早生き残っていないのではと思えてきます。和紙、織物、木工、藁仕事など道具として現在利用されていないであろうことは容易に想像出来、伝承者が途絶えてしまっているのではないでしょうか。若干陶磁器など焼き物関係は辛うじてまだ残っているぐらいかと。時代の趨勢とは如何ともし難いものです。

 

それともう一つ感じたのが、昔は製造が随分身近にあったのだなと感じます。地産地消とでもいうべきか、その土地その土地で必要とされたものを作り上げ、使用していったものがそれぞれの地域ごとに存在しているのです。今は日本どころか、世界共通プロダクトが当たり前の時代であり、そもそも日本国内で製造されているものすら少なくなりました。膨大なサプライチェーンが広がる現代で、幅広い身近にある材料を用いて一つの製品を作り上げるということが成り立たない時代なのかもしれません。

21世紀の「男の子」の親たちへ

 

 新エリート教育では、新しい時代に求められる教育の在り方について描かれていましたが、本書ではより具体的に新しい時代を生きて行くであろう自分の子供達に対して、親である大人達がどのような心構えでいるべきかを示そうとしています。そして、その内容は著者が過去行った著名校の先生方のコメントから構成されています。

 

お題は「ジェンダー」「AI時代」「グローバル時代」「自由」。子供をどういう風に教えて行くかといった内容ではないので、正直戸惑います。まぁそういう考えでいればいいのかなって感じで軽く読めば良いのですかね。ただ一番心に響いたのは第5章に書いてあった、いつの時代も必要な力「そこそこの学力と知力」「やり抜く力」「自分にはない能力を持つ人とチームになる能力」。

 

「自分は愛されているという安心感があり」「様々な失敗を経験し、」「しっかりと反抗期を堪能したのちに、素敵な恋愛ができれば」「何も心配ない」というところでしょうか。子供を育てるって難しいようで、根本のところは昔から変わらず明快なものなのかもしれないですね。

新エリート教育

 

タイトルだけ見るとエリートってなんだよってちょっとお高く止まっているように思ってしまいますが、左にあらず、これからのエリートとはなんであるかを示しながら、今世界で広がりつつある新しい教育の在り方を紹介しつつ、今後の教育について論じています。

 

本書を読んでいると、自分が受けた2,30年前の教育とは全く異なって来ているんだなぁと改めて感じました。昔が単純なる詰め込み教育といえばそれまでですが、今の教育はそんな簡単なものではなく、いろんなことを複合的に教えなければならないので、本当に先生方は大変だなと思ってしまいます。子供の入学式で久しぶりに学校というものに入った時、担任を持っている先生以外の先生の多さに驚きましたが、それもそのはず、時代の要請により学校というものに求められることが多種多様になり、一人の先生のキャパシティを超えた専門性を求められているということなのでしょう。

 

本書の内容は世界の最先端の動きを紹介したものではあるのですが、その思想は既に一般公教育にも導入されつつあり、大学入試改革などはその典型的なものとなっています。コンピューターが普及し、単純に知識を知っていることは無用、それをどう当てはめるかといった仕事もAIに代用されていくと言われている世の中で、子供達が将来どうすれば生き抜いて行けるかを教えていかなければならないのです。

 

そしてそれは心身頭の全てを育むホールチャイルドアプローチという形で紹介されてます。なんだ、それって今までと同じじゃないかと思うところもありましすが、一つ加えるなら「デザイン思考」によるクリエイティビティが更に重要性を増しているように思えます。

 

そしてその先には、社会課題を解決するための起業といった新しい時代のキャリア構築というものが想定されているようです。単純に会社に入って、働くといった我々の時代からは想像も付かないような高度なことを求められる時代になってきているようです。いやぁ、大変だ。

 

1兆ドルコーチ

 

 帯に書かれてますが、スティーブ・ジョブズエリック・シュミットラリー・ペイジといった名だたる人々のコーチを引き受けていた人がいるといったら驚きですが、実際にそんな人がいたんですね。しかもグーグルでは単に個人ではなく経営陣というチームをコーチして企業を導いていたというのだから、二度驚きです。本書はその「ザ・コーチ」ともいう人を偲んで、書かれたものです。そうなのです。もう、コーチは亡くなっていているのです。なので、自伝ではなく、過去何らかの形でコーチングを受けた方々からのインタビューをもとに描いた本なのです。そして、何が凄いかっていうと、この本はそんなコーチがコーチ足り得た真髄を抽出しようとしている点にあります。コーチが携わって、経営チームを正しく導いたからこそ上手くいっていたという思いがあるからなのでしょう。実際、Googleにしろ最近のシリコンバレーの会社から一時期の勢いが見られなくなっているような気がするのは気のせいでしょうか。

 

本書を読んでいるとコーチがコーチたり得たのは、コーチの個性に由来するところ大に感じるので、本書の目的は達成しつつも再現は難しそうだということは非常に残念なことではあります。

子育てベスト100

 

 子育てに関するトピックを100個まとめて編集したものです。個々の内容を読むと、全くその通りだと思うのですが、子育ては笛吹けども踊らず、なかなか思い通りにはいかないですね。そうやって四苦八苦するのが大切なのかもしれませんが、人それぞれ個性があり、色々試してみて上手くフィットするやり方を見つけ出してあげるしかないのかと思います。

 

そんな試行錯誤を自分で一つ一つ編み出しているには時間がないので、このような本を参考にするのはとても手っ取り早くて良いのだと思います。

最も賢い億万長者

 

 

 

最近は極秘のベールに包まれていたヘッジファンドの内情を描いた本が出版されるようになってきましたが、ついにあのルネサンステクノロジーの本が出版されました。秘密保持契約に守られ、常に噂だけが漏れ聞こえてくる程度でしたが、本書で色々詳しく描かれていてとても興味深いですね。

 

その設立から発展、世の中の全てのデータを掻き集めて売買のネタに関連付けて処理される機械学習の仕組みまで、もちろん詳細までは記載されていませんが、その思想は知ることができます。なるほどねぇと思います。

 

自分もシステムトレードを妄想したこともありますが、その仕組みを考えれば越えなければならない壁がいくつもあることに気付きます。例えば取引データの期間。日次、月次、年次などどの期間でデータを参照して取引に役立てるか。取引のボリューム、ロスカットのタイミング、勝ちの割合。そしてもちろん大切なのはどういったストラテジーを用いるか等々。。。そんな課題に同じように遭遇して解決していったのですね。その解決手法がクオンツ的というだけでやっぱり考えなければならないことは一緒なんです。あとは解決するまでやり抜くこと。それが稀代の収益をあげ続けることが出来たファンドを作り上げる要因なのでしょう。自分はすぐ挫折でしたが。

 

終わりの方はファンドの共同創設者がトランプ政権に関わっていた件が描かれています。巨万の富をもとにデータアナリティクスの会社と組んで、世論を操作したと耳にしたことがありますが、結局そのことがバッシングを生んでいたのですね。今年のトランプ再選の際も同じように協力していたものだと思っていたのですが、本書の内容からするともう縁が切れているのですかね。そのラインがなくなったのが、再選叶わなかった理由かもしれません。 

放っておくとこわい症状大全

 

 何気ない体の不調というのはたまに感じることはあるのですが、それが大病の予兆であれば見逃してはいけないものです。そんな予兆とその原因を病気を通して書いてあるのが本書です。ふと何か感じてもちょっと我慢すれば治るかなぁと思いがちですが、それは禁物、すぐ病院で検査受けた方が良いことも多々あるわけです。早期発見早期治療で救われる命もあるというものです。今までは何かあってもちょっと我慢すれば良いかと思ってたりもしましたが、もういい歳なので、一読して何かの時のために備えておいた方が身のためだと思いました。気にし過ぎもよくないですが。