キリストの勝利 ローマ人の物語XIV

ローマ人の物語 (14) キリストの勝利

ローマ人の物語 (14) キリストの勝利

歴史が好きな人ならば結局の所、どんなに偉大な出来事であろうとも所詮は人の所作が織成すものの積重ねであることに気付くと思う。そして、だからこそ面白い歴史の本というものは単なる出来事の羅列ではなく、魅力ある登場人物が不可欠になってくるのだろう。

塩野七生の本はその登場人物の描き方がとても暖かく、優しく、厳しいものであるがために好きなのだが今回出てくる皇帝ユリアヌスにはとても興味を引かれた。20代前半まで幽閉された身でありながら突如歴史の表舞台に立たされ、そして31歳で若くして死を遂げるまで、その短い間の活躍とその間の思慮に思いを馳せずにはいられなかった。「背教者」と呼ばれる彼が、もしもっと長く生きていたならば今日のキリスト教の存在自体が随分と変わったものになっていたのは間違いないであろう。

皇帝になった歳と今の自分の歳と、ちっぽけながらの自分の立場とを重ね合わせ、その生き方に思いを寄せる正月の夜なのでした。