- 作者: オルハンパムク,Orhan Pamuk,和久井路子
- 出版社/メーカー: 藤原書店
- 発売日: 2004/11/01
- メディア: 単行本
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更に不思議なことに、そんな日本語訳の中から遠い15,6世紀のアラブ、イスタンブールの世界がとても繊細に描き上がってきます。まるで主題としている細密画のように。そして、描かれている言葉と絵画とがそれ自体が命を持って語りだしていくような読んでいると自然とそんな思いが湧いてきます。形式も独特で、それぞれが1章ずつ各登場人物の主観で語るような形式になっています。そしてそれが連なって物語が進んでいきます。劇としてアレンジしたらいい具合に出来そうですね。
物語自体は600ページを超えるほどもあるので、多少冗長した感もあります。でも、それに値するくらいの圧倒的な世界観とアラビア世界の雰囲気というものを描き出してくれて、なかなかに読み応えのある一冊でした。