十字軍物語2

十字軍物語2

十字軍物語2

さて、1に続いて2です。第一次十字軍にて聖都イエスラエルを占領して、国家まで樹立した十字軍ですが、その後は苦難の歴史を歩みます。原因の一つは騎士の減少です。元々ヨーロッパから連れてきただけあって、戦いで死ねば数は減るのです。そして補充が効かない。食糧などと違って、現地調達するわけにもいかず、ただただ削り取られるように減少していくのです。

原因の二つ目は優れた統率者が次第にいなくなった点です。元々十字軍国家は4つに別れていたのですが、それが1つずつ崩されていきます。それは各国の統率者がいなくなるにつれてジワジワと進んでいくのです。第一次の時のリーダ達は征服という経験を積むにつれて優れた統率者へと育っていく訳ですが、それを受け継いだもの達はそんな経験値がないわけですから、どうしても小粒になってきてしまいます。そんな中でもライ病を患った若きボードワン王の話には心を動かされました。自分の長くない命を知りながら、その責務のために全力を尽くして戦っていく姿に。

最後の3つめの理由は敵であるイスラム世界において優れたリーダーが輩出しはじめたということです。僕でも名前を知っていた、サラーフアッディーン。シリアからエジプトまで統合されたアラブ世界では、もはや勝負ありと言っても過言ではないでしょう。

かくして、100年近く続いた十字軍国家は終わりを告げるのです。そしてそれが次の第三次十字軍を生み出す原動力へと繋がっていくのですね。

追記ですが、この本を読んだ後に映画「キングダム・オブ・ヘブン」を観ました。ボードワン王にまつわる話を映画化したもので、昔上映した際にも観たことがあったのですが、本書を読んで十字軍全体のストーリーを知った上で観ると内容への理解や没頭の仕方が全く異なってとても楽しめました。ブルーレイで観たので、とても映像が綺麗で、十字軍の世界に浸るのにとてもいい時間を過ごすことが出来ました。