- 作者: 出町 譲
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/08/03
- メディア: 単行本
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たまにお名前を目にすることがありますが、大抵は経営者の鏡みたいな扱いで、場合によっては松下幸之助や本田宗一郎よりも尊敬を集めていたりします。昔はこんな凄い人がいたんだが、今はさっぱりだ的な文脈で語られてたりもします。見習えと。今この方が生きていたらなんと言われるだろうかと。よく見るのはこのパターンですね。
それが悪い訳ではないのですが、やはりどのようなことを考え、実行してきたかを知りたくて本書を読んでみました。基本的には自主自立、個人個人がなすべきことをなすべしという考えだと感じました。しかもそのなすべきことのレベルが非常に高いのです。断固妥協がない。しかし、だからといって全てに厳しいわけでもなく、対話を重視していたり、社員を首にしないなどヒューマニスト的な側面も併せ持っています。個人的意見ですが、この失われた数十年、日本はリストラにリストラを重ねて来た訳ですが、本当にリストラというものが正しかったのか、考えてみる必要があると思います。アメリカ式合理主義を元に考えれば、疑い用なくリストラが正しいのですが、それによって我々が失ったものというのは、得たもの以上に大きいんじゃないかなと感じるのです。そして、それに我々は縛られ続けているのです。
話は戻ってヒューマニスト的な側面という意味では、土光氏の母親の存在というのは大きいですね。何せ70歳を過ぎてから女子の教育のために、学校を作ろうとしたのですから。そして実際作ってしまったのです。横浜の橘学苑がそうなのです。個人的にここの学校卒の方を知っていますが、個性的な人格形成という教育方針が尊重され、脈々と伝わっていました。凄いことです。
更に復興に絡めて言えば東芝で原子力を押し進めたのも土光氏だったんですね。残念ながら、結果は凶と出てしまったのですが、やはり結果よりもそのプロセスに我慢ならなかったかもしれません。安全よりも利益を重視しまい、慢心して原子力を運営してしまったことに。