マイケル・ポーターの競争戦略

〔エッセンシャル版〕マイケル・ポーターの競争戦略

〔エッセンシャル版〕マイケル・ポーターの競争戦略

経営学の大御所とも言われるポーター氏の著書を読んだことがなかったので、更に妥協してこのようなまとめ本を読んでしまいました。といっても著者はポーター氏の研究者的な存在といえるくらいに難解なポーター氏の著作を読み込んでいるので、解釈の間違いや持論の展開などは入る余地もなさそうで安心です。

まず読んで思ったのは、今までのイメージとの乖離ですね。今まではなんというか、資本主義/市場主義の大本営という印象でした。勝手ですね。本書を読めばわかるのですが、ポーター氏は経済学的な意味で、利益の重要性を強調していますが、だからといって、短期的な利益追求が正しいということは全く言っておらず、むしろ立場的には逆と言っても過言ではない気がします。そういった意味でポーター氏の言葉はよく聞いたことがあるのですが、そもそもの意味で使われていることはあまりないのではと思えます。

以下本書のまとめとなりますが、これを読めばきちんとポーターの説を理解してるという人が少ないということがわかると思います。

1.最高を目指す競争は、一見正しいように思えるが、実は自己破壊的な競争方法である。
2.利益を生まない規模拡大や成長には、何の意味もない。競争の目的は市場シェアではなく、利益にある。
3.競争優位の目的は、ライバルを打ち負かすことではなく、顧客のために独自の価値を産み出すことにある。競争優位は必ず損益計算書に反映される。
4.戦略には特徴ある価値提案が絶対に欠かせない。だが、戦略はマーケティングだけの問題ではない。特別に調整されたバリューチェーンがなくても実現出来る価値提案は、戦略的に意味がない。
5.あらゆる顧客を満足させようと思わないこと。一部の顧客を意図的に不満にさせるのが優れた戦略の特徴である。
6.戦略は組織がやらないことをはっきりと打出して、初めて意味を持つ。トレードオフは、競争優位を実現し持続させる、戦略のかすがいだ。
7.優れた実行の重要性を過信してもいけないし、甘く見てもいけない。実行それ自体は持続的な優位の源泉にならないが、これに遅れをとると、どんなに素晴らしい戦略があっても卓越した業績をあげることはできない。
8.優れた戦略は、一つではなく多数の選択に立脚しており、さまざまな選択間の結びつきの上に成り立っている。一つのコアコンピタンスが持続可能な競争優位を産み出すことはまずない。
9.不確実は状況で柔軟性を保つのは得策のように思えても、何の主義主張も持たず、何のとりえもない組織になるのがオチだ。変わりすぎることは、変わらなすぎることと同様、致命傷になりかねない。
10.一つの戦略に徹する上で、大胆な将来予測は必要ない。戦略に徹することで、イノベーション能力と混乱への対応力がかえって高まるのだ。

つまり、全方位ではなく、とんがった分野への注力こそが大切。そのために事業戦略を構築すること。市場やヘボコンサルのいうような短期利益、業界のベストプラクティスの適応なぞクソクラエといったところでしょうか。いや〜、こんなこと言ってたなんてなんかダマされてた気分ですよ。それとも私の勉強不足なのでしょうか。