茶と美

茶と美 (講談社学術文庫)

茶と美 (講談社学術文庫)

日本民藝館創始者柳宗悦氏による茶に対する批評です。小論を持って構成されており、それぞれ違う内容となっています。茶というても基本的には茶器の話ですね。

今まで美術に対する評論というものは読んだことがありませんでしたが、なるほどこれが評論というものですか。硬く重い言葉が理路整然とならべられ、まるでそのもの実物がそこに存在するかのような書きぶりです。久しぶりに言葉を一つ一つ味わうようにしながら文章を読んでいました。

この批評によれば、茶器を鑑賞する際に、銘や箱書きに影響されず、まずものをあるがままに観ることを第一であるとしています。ですので、このあるがままにその存在を描き出す記述の仕方というのは、正にその思想そのままであるのだと感じました。

しかし、内容もとても硬派であり、まず日本の楽茶碗はコテンパンに書かれています。一押しは井戸。なんでも奇をてらうことなく、本能のまま作り出したものが美しいということです。茶の思想の元である禅からして、邪気があることが許せないと申しております。まぁ御説尤もではありますが、私は楽茶碗好きですけどね。