日米開戦 陸軍の勝算

日米開戦 陸軍の勝算 (祥伝社新書)

日米開戦 陸軍の勝算 (祥伝社新書)

陸軍といえば、中国へ静止の効かない進出を行い、226事件により政治的思考にトドメを刺し、東條首相の戦争指導を産み出した元凶である訳です。自由闊達進歩的な海軍のイメージとは対象的に、まぁいい印象は全くないのです。

そんな陸軍にこのような「腹案」があったとは驚きです。日米開戦前に総力戦の前提のもと、経済学的観点から戦争遂行のあり方を推論していたというのはとても新鮮でした。しかも陸軍がです。今では第二次世界大戦のゲームがあって、日本を担当してみればわかりますが、我々が辿った戦争の歴史というのはやはり「愚」の一手としか言いようがありません。もちろん、国内の様々な状況を加味しなければなりませんが、針に糸を通すような戦略がないとあの状況は生き残れないです。それをいきなりアメリカに「ズドン」とやるわけですからね。そりゃ負けますよ。

この陸軍案ではアメリカ相手は想定していません。むしろ一番相手にしてはいけない相手と認識しています。石原莞爾の最終戦争論の最終相手であった筈です。中国と一緒になって、力を付けて漸く相手出来るような相手であった筈です。

陸軍について、我々は未だにアメリカの思想操作に影響されているのでしょうか。この「腹案」を作成した人達も戦後はむしろ自分たちが行ってきたことを偽っていたようです。何が真実なのか、まだまだわかっていないことがあるのかもしれません。