「日本人論」再考

「日本人論」再考 (講談社学術文庫)

「日本人論」再考 (講談社学術文庫)

そういえば、最近日本人論というものをあまり見かけなくなったような気がします。ひょっとしたらSAPIOなんかを読んでればそんなこともないのでしょうが、自分がそのような情報から遠ざかってるからかもしれません。そう思って本書を読んでみました。

明治期以降、日本人とはなんぞやという書籍を時期毎に傾向を分類しながら説明していきます。明治期というのは、西洋に日本とはどのような国であるかということを説明する書籍が多いですね。武士道とか茶の本とかになります。

日本とは西洋に非ず、しかし東洋の中でも孤立して突出した存在の中で、アイデンティティを求めようとするのが日本人論が語られる所以となるのですね。特に戦中期は日本がなぜ西欧と戦わなければならないかも踏まえた理論武装として展開されています。今となれば若干無理があるようにも感じますが、歴史の流れの中で、日本の立ち位置がどうあるべきかといった点については一考に値すると思います。

最近見ないと思っていましたが、本書でも最後に今後は日本人論というものが書かれていかなくなるだろうという論述がまとめられています。孤独な日本というのが、やがて世代と共に解消されていくだろうというのがその理由です。そうは言ってもよく考えれば、「ガラパゴス論」とか逆に「日本は凄かった」的な報道がされる中で、相変わらず日本の立ち位置というのは変わらないのかもしれません。