危機と人類

 

危機と人類(上)

危機と人類(上)

 

 

 

危機と人類(下)

危機と人類(下)

 

著者の本は「銃・病原菌・鉄」以来で「文明崩壊」は読もうと思ったのですが面白くなく途中で挫折してました。本書はなぜか浮世絵の表紙を使っていることもあって、興味が湧いたので手に取って見ました。

 

本書では人類(というより国家)の危機に対して、今までどのように克服してきたかについて過去の事例を元に分析して、今後の危機対応の処方箋とすることを目的としています。浮世絵が表紙に使われていることもそのためであり、なんと日本は危機克服の代表例として2つ(明治維新と戦後)も挙げられており、かなり評価されていることが伺えます。

 

危機への対応基準についても、本書では明示されており、それは心理療法士が個人の危機に対してその帰結に関わる要因として挙げている12の事項をそのまま国家の危機に対して当てはめるというやり方です。この12の処方箋は問題発生時の対応として個人に用いるには確かに妥当だと思いますし、それはかなりの割合で国家にも当てはまるというのには同意です。

 

本書には日本の課題もいくつか書かれており、まず少子化が挙げられてますが、著者は意外にもそれは課題ではないと論じています。なぜなら、人口の多さが逆に日本の問題であったからという逆説的な考えです。つまり日本の問題は資源の乏しさにも関わらず、人口が多いことこそが対外的に進出した要因であり、それこそが中国への進出といった、第二次世界大戦を産み出した理由ともなったと論じているためです。そうか、そういう考えもあるのだなぁと思ってしまいました。とはいえ、移民に積極的でない姿勢は批判するなどどっちなんだと思うこともありますが。

 

現在人類が抱えている課題として環境問題、特に温暖化を挙げていますが、その点に関しては本当の問題なのか、単に環境リベラリズムが向かう矛先がなくて、そちらに流れているのか、個人的には判断つきかねるところです。