手仕事の日本

 

手仕事の日本

手仕事の日本

 

 民藝運動で活躍された柳宗悦氏の著作です。タイトルからもわかる通り、日本各地の民藝を紹介したものです。各地域の風土に根差した手仕事を丹念に拾っており、よくぞここまで蒐集したものだと感心します。しかも今ではこの本も電子書籍で無料で読めてしまうなんて良い時代ですね。

 

本書が書かれたのは戦中とありますが、戦争によって飛散してしまったとのこと。戦後改めてまとめたのが本書とのことです。しかし本書を読んで行くと宗悦氏が絶賛した民藝の手仕事の数々は最早生き残っていないのではと思えてきます。和紙、織物、木工、藁仕事など道具として現在利用されていないであろうことは容易に想像出来、伝承者が途絶えてしまっているのではないでしょうか。若干陶磁器など焼き物関係は辛うじてまだ残っているぐらいかと。時代の趨勢とは如何ともし難いものです。

 

それともう一つ感じたのが、昔は製造が随分身近にあったのだなと感じます。地産地消とでもいうべきか、その土地その土地で必要とされたものを作り上げ、使用していったものがそれぞれの地域ごとに存在しているのです。今は日本どころか、世界共通プロダクトが当たり前の時代であり、そもそも日本国内で製造されているものすら少なくなりました。膨大なサプライチェーンが広がる現代で、幅広い身近にある材料を用いて一つの製品を作り上げるということが成り立たない時代なのかもしれません。