風濤

 

風濤 (新潮文庫)

風濤 (新潮文庫)

  • 作者:靖, 井上
  • 発売日: 1967/03/20
  • メディア: 文庫
 

その昔、中学の時に担任の先生に勧められて読んだ本が井上靖の「しろばんば」でした。今ではもうあまり読まれないかもしれませんが、戦前の大らかな雰囲気の中で育つ井上氏自身の自伝的小説に自分も大いに影響されたものです。

その後も継続的に自伝的小説関連は色々読んだのですが、その他の小説は気にはなっていたものの、結局読みませんでした。最近ふと本書のことを知ったので改めて読んでみた次第です。

 

本書はいわゆる「元寇」の発生を朝鮮、当時の高麗の立場から描いたものです。元の攻撃に領土を荒らされ、跪いて臣下となりなんとか許してもらったのもつかの間、今度は日本出兵の片棒を担がされます。それはもう継続的に瀕死の状態にさせられているようなものです。軍船の建造、矢や槍などの武器の調達、船員人夫に兵士の確保で国土の人口総動員させられます。そして疲弊の極みに達するわけです。哀れ、弱小国とはかくなるものかな。ぜひこの状態の韓国ドラマを見てみたいものです。しかし数万人の徴兵で働き手がいなくなるとは当時の人口はいかほどのものだったのでしょう。まぁなんか今の北朝鮮とあまり状況変わってないのだなと思ってしまいました。

 

しかも悪いことに、朝鮮人内部でも裏切り者が多数発生し、元側に付いて朝鮮の痛いところをつく政策を実行してきます。さらにこれがダメージ大きかったりして、国土の荒廃に拍車がかかります。

 

結論。一致団結して国土防衛に当たった当時の日本の幕府、朝廷は偉かったなぁというところです。海の存在が有難かったという点も大きいですけど。