イザヤベンダミンや「空気の研究」など山本七平氏のことは昔から知っていたのですが、その著書をきちんと読んだのは初めてでした。ちょっと後悔。もっと早くから読んでおくべきでした。本書ほど「日本とは?」ということを根本的なところまで掘り下げて考察した本はないんじゃなかろうかなと思います。
そもそも本書を手にしたのは「一下級将校の見た日本陸軍」のことを知ったからです。それからずっと読みたくもあり、読みたくなくもあり、著者のことだからきっと当時の日本陸軍のことが赤裸々に描かれているんだろうなと思いつつも、その酷さを目の当たりにするのに気が引けていたのだと思います。しかし、いざ読んでみると読んでよかったなと思います。淡々と当時のことが描かれていて、酷さを通り越してしまいました。
著者は大戦末期に学徒徴兵され、砲兵少尉としてフィリピン戦線を戦います。もう徴兵検査の段階から不合理な点を淡々と描いて行くわけです。もはやそれは滑稽ですらあるのですが、残念なことにそれは戦争、つまり人の生き死にに絡んでくるわけです。本書の中でも日常の景色のように実に淡々と人が死んで行くのです。つまりそういう過酷な状況において、更に不合理、不条理な理由で人が死んで行くのです。きっと著者の根源には「なぜ彼らは死ななければならなかったのか」 という問いがずっとあったのだと感じます。
いずれまた読み返したいと思う一冊です。