ゼロ・コミッション革命

 

アメリカでは様々な金融革命が行われてきましたが、ことリテール分野においては本書におけるチャールズシュワブが起こしたコミッション低減とバンガードなどが行っているインデックス運用なのだと思います。

 

その昔、株式投資を行う場合は証券会社に連絡して取次してもらう必要がありました。この取次料がコミッションで日本でも証券会社の主な収益源だったわけです。バブル期なんかはこのコミッションでボーナスが札束で支払われるほどだったと聞きますね。これこそ濡れてで粟状態な訳です。でもたかが取次、取引所と間に立って株を約定させるだけで高額の手数料を請求できた時代は情報化の進展と共に終わりを告げるのです。だって、取引所とネットワークで繋いでしまえばそれで取引出来ちゃうわけなんですから。ただそれを見越して、逐次サービス提供、コミッション削減を先導してきた会社というのがチャールズシュワブなのです。

 

ただチャールズシュワブと同時期に同じようなことをやっていた同業はたくさんいたと本書でも何度かコメントありましたが、ではなぜチャールズシュワブが優位性を保ったのか。本書では顧客本位を再三謳ってましたが、確かにそれもあるのでしょうが、どちらかといえばマーケティング、会社としてのイメージ作りが一番効果的ではなかったのかと感じました。トップであり、社名でもあるチャールズシュワブ氏の人柄、雰囲気、それを前面に出した広告が人々に与えた印象、これをもっと重要視すべきです。所詮取次なので、競争優位は働き辛いのです。そんな中で与えるイメージ作りが企業にとっては大切なのではないでしょうか。

 

もう一点凄いと思えることというのが、リテール業務に絞り込んで、IBや発行市場などに手をださなかった点です。普通ちょっと成功すればすぐフルラインを目指したがりますが、チャールズシュワブはきちんと本分を弁え続けて、顧客のためのサービス提供に力を注ぎ続けています。そういったスタンスも顧客から支持される理由なのでしょう。どちらにも手を出すと、証券市場では利益相反が発生しうるので、それを避けるためというのは顧客本位を裏付けることになり、それが優位性にも繋がるのです。