男の民俗学大全

 

まずは本書を手に取るとそのページ数に圧倒されます。なんと1冊で1000ページ。普通の文庫だと上中下ぐらいで分割しそうな厚さです。そして文中に出てくる挿絵の存在感。なんかこう訴えかけてくるようなパワフルさです。

 

民俗学というものの守備範囲までは詳しくは知りませんが、本書で紹介されているのは日本各地で生活と共に育まれた様々な職種についてです。初出はだいぶ1980年代と書かれているので、きっと昭和の終わり頃まではこのような方々がまだ現役で頑張ってらしたのでしょう。令和の今となっては書物でしか知ることの出来ない途絶えた職種がほとんどなのだと思います。しかしそれも仕方がないのかもしれません。読んでて思うのは、確かに今なくても問題はないのだろうなと思ってしまう職種ばかりなのでした。しっかりした技術を積み上げ、芸術品ともいうべきレベルに達していたとしても需要がなければ悲しいかな致し方なしかもしれません。

 

特に漁業などは各地で様々な漁の仕方を工夫されてきたようですが、もはや継ぐ人もいない状態なのでしょう。でもそれも致し方ないかもしれないですね。どの漁師さんも「昔はもっと獲れた」という言葉を残してますが、その原因が自分達が獲り過ぎたからだと思ってる人は一人もいないようでした。

 

しかし、このような本に収録され、その存在を残すことが出来たというのは良かったのだと思います。個人的には日本各地でこのように息づいて生活出来ていたという存在を知れることが出来てとても興味深かったです。