ある明治人の記録

 

義和団事件の際に北京籠城して各国からの難民保護に功のあった柴五郎氏の自伝です。本書のことを知ってはいたのですが、実はまだ読んだことがなかったので手に取ってみました。自伝ですが、取り纏めたのは石光氏で、「城下の人」等4部作をまとめた方ですね。これもそういえば、そうでした。しかも柴氏と石光氏とは友人関係であったということでなんとも不思議なご縁があるものですね。

 

義和団事件が有名過ぎて、その経緯の詳細を知りたかったのですが、残念ながら本書はそこに辿り着くずっと前、著者が陸軍幼年学校に入学が決まった時点で終わっています。しかし目的はそこに在らず、そこに辿り着くまでの苦難の半生を描くことにあるのでした。幼年時代戊辰戦争が起こり、藩の役職に勤めていた家系として、賊軍の汚名を着せられ、鶴ヶ城落城の際には女系家族皆自刃してしまった過去。その後も斗南藩という僻地に飛ばされ、開墾も思うようにいかず困窮生活を強いられた苦難の歴史と、西南戦争で昔年の恨みを返した会津人の思いが淡々と綴られています。本書を記載したのが、大将にまでなって、もう老年時代ということで、幼年時代の思いは一生褪せることがなかったんですね。次は「北京籠城」を読んでみたいと思います。