謀略の影法師

 

伝説的な馬賊の小日向氏の動向を戦後をメインに追ったのが本書です。馬賊となり、中国を縦横無尽に走り回った方からすれば戦後の日本で生きるのは閉塞感があったかもしれません。当時は大陸浪人という言葉もありましたが、満州の大陸を夢見て大きなロマンを感じて飛び込んだ人々がたくさんいたことでしょう。その中で一番成功したのが本書の小日向氏なのだと思います。五族協和という言葉もありました。理想を夢見たのか、自分の立身出世を夢見たのか、陸軍の謀略が渦巻き、共産党と国民党が争う中で人望を得ながら立ち回っていくのは血湧き肉沸る思いだったでしょう。今でもそういう思いで生きている人はいるんですかね。そういう人達にはいきずらい世の中かもしれません。