ルワンダ中央銀行総裁日記

ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書)

ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書)

ルワンダと言えば、大量虐殺のあった紛争で有名ですがこの話はそれよりも何十年も前の1970年前後のお話。日銀で働いていた著者が、要請により経済的には何もないと言って過言ではないルワンダに総裁として赴任します。

ルワンダなんて今でさえ辺境の彼方というイメージで、よくこの時代に行く気になったなと思います。しかも極貧国なわけですから、その経済を預かる中央銀行の総裁という役職の大変さは想像するに余りあるわけです。しかし、著者は前向きにこれ以上悪くなることはないだろうという気持ちで状況を打開しようと奮闘いたします。しかもその奮闘っぷりが理路整然と経済学の教科書を読んでいるかのように鮮明に描かれ、かつその理論と実践がしっかりと結びついています。なんだかルワンダ経済版坂の上の雲といった風情です。この経済というものの本質的な動きをきちんと理解して、現地の事情を考慮に入れ、それをもとに運用に移すという根本的だが困難な役割をとても鮮やかにやってのけていくのが凄いです。近年はなんだか小手先の金融論ばかり目がいっていてこういう本質的なところから離れてしまっている気がするのですよ。

やっぱり旧制高校から東大行ったエリートはかくもやはりエリートらしいというべきなのだろうか。ちょっと埋もれがちではあるけれどもかなりの良書。