謀略の影法師

 

伝説的な馬賊の小日向氏の動向を戦後をメインに追ったのが本書です。馬賊となり、中国を縦横無尽に走り回った方からすれば戦後の日本で生きるのは閉塞感があったかもしれません。当時は大陸浪人という言葉もありましたが、満州の大陸を夢見て大きなロマンを感じて飛び込んだ人々がたくさんいたことでしょう。その中で一番成功したのが本書の小日向氏なのだと思います。五族協和という言葉もありました。理想を夢見たのか、自分の立身出世を夢見たのか、陸軍の謀略が渦巻き、共産党と国民党が争う中で人望を得ながら立ち回っていくのは血湧き肉沸る思いだったでしょう。今でもそういう思いで生きている人はいるんですかね。そういう人達にはいきずらい世の中かもしれません。

クララとお日さま

 

カズオイシグロ氏の小説です。AF(人口親友)であるクララの物語。舞台は近い未来を想定されているのでしょうか、クララの一人称による回想により、かつての所有者であったジョジーとの日々が淡々とつづられています。その作風は「日の名残り」と似ているかもしれません。でもなぜか読ませる著述はさすがですね。たまにはこのような物語を読むと言うのもいい気晴らしだと感じます。

嫌われる勇気

 

全く意外なことに私、本書を読んだことがありませんでした。結構有名な本で名前は以前から知っていたのに非常に意外でした。改めて読んでみると、とっても私の常日頃考えていたことと似通っていたので、更にビックリです。「嫌われる勇気」ホントこれに尽きますね。他人に嫌われようが、それは私が直接的に関与出来ることではないので気にしても仕方がないと言うスタンス。これは強いです。もちろん、好かれた方が良いに決まってるし、嫌われるような態度、行動を進んでやるわけではなく、自分の関与出来る行動までに注意を向けて、それ以上は気にしないと言うスタンスこそが大事なんだと思います。これさえ掴めればメンタル最強です。上司の人事評価すら気にならなくなります。

 

それ以外にも「お前の顔を気にしてるのはお前だけ」とか人生は他者との競争ではないという話も常々思っていたことでした。私、アドラーの生まれ変わりかな?と思ったくらい日常的に考えていたことがとても綺麗に表現されてました。

 

人生は連続する刹那であり、その刹那を大切に生きると言うのも非常に共感できます。それこそが後悔しない人生に繋がるのでしょうし、逆に人間が出来るのは今を生きることだけなのですから。

 

フロイトの過去に囚われた心理学よりも、常に今を大切に生きていく本書の考え方の方がとっても魅力的なのだと思います。読んでよかったし、悩める万人に勧められる一冊だと思います。

資本主義だけ残った

 

共産主義が絶滅した今、現代では本書のタイトルのように資本主義だけが残った状態となっています。その中で本書では資本主義の2つの流派に焦点を当てて説明するとともに、今後の資本主義社会がどのようになっていくのかを論じています。

 

資本主義の2つの流派とは、1つはアメリカのようなリベラル全盛の資本主義であり、もう1つは中国のような資本主義を取り入れてはいるが、国家の統制色が色濃く残った政治的資本主義となります。リベラル資本主義の方は、富裕層が世代を重ねるに連れてより富裕層となり、貧富の差が開き、かつ固定的になりつつあるという現実が観測されています。これが今のアメリカの断絶を引き起こしているのは間違いないと言えるのでしょう。一方政治的資本主義については、これまた社会主義の名残なのか贈収賄が絶えないと言うのが、これもシステム上の欠陥点といった形で浮き彫りにされています。よく取り締まりなんかを強化しているというニュースを耳にしますが、もはやモグラ叩きに近いくらい当たり前のように蔓延っている現象なのでしょう。

 

最後の章では資本主義の将来像について、語っています。正直1章とこの最後の章だけ読めばよかったかなという内容でした。日本は政治的資本主義にはなれないし、アメリカほどではないですがリベラル資本主義がまったりと息づく社会となっていきそうです。そして中国はどうなっていくのでしょうか。政治的資本主義をこのまま続けられるのか、今までの人口ボーナスが逆回転しつつある中で、どのような展開を見せるのか、興味深いところです。

勇者たちの中学受験

 

中学受験の子供を持つ親としては気が気でない季節になってきました。登場する学校や塾が全て実名なので、真実味を帯びています。解説に書いてありましたが、やっぱり実際にインタビューした内容を元に描いたものなのですね。

 

本書では3つのエピソード、受験生家族を描いていますが、つまりは中学受験におけるハッピーエンドは何なのかってことで、それはそれぞれの家庭ごとに異なると言うことです。それを世間の評判とか親のエゴに惑わされないように、乗り越えていくことが大切だと著者は言いたいのだと感じました。されど中々難しいですよね。上がらない成績、上がる課金。小学校4年(或いはもっと前から!)から捧げた時間と費用に見合う結果をどうしても求めてしまうわけです。何なら親も中受組だと、あんな学校に行くのか!?と言う結果に耐えられない事も起きるのです。

 

産まれる時は健康に産まれることのみを祈り、次は元気に立って歩いてくることのみを祈っていたのに、これ以上の高望みはないなと思いつつもやはり自分の子供たちには良い将来を歩んでもらいたいのです。格差社会と言われようが何だろうが、学歴社会の入り口である中学受験でまず第一歩を後押ししてあげたいと思うのは致し方ない親の性なのです。そしてそのためなら多少の費用は惜しまない。そしてその結果を追い求めてしまう。

 

しかし、所詮中受。子供たちの人生はまだ始まったばかりであり、人生の長い道のりにある初めてのハードルに過ぎないわけです。これに一喜一憂することなく、自然体で結果を受け入れられるように、改めて心を静めれるよう、親御さん達にはぜひ本書を読んでもらえたらなと思います。ハッピーエンドが訪れるように。

野心のすすめ

 

有名な方ですが、今まで読んだことなかったですがテレビでたまたまお見かけして気になったので読んでみました。エッセイです。すぐ読めます。

 

タイトルにある通り、野心です。今野心持ってギラギラしている人少なくなってるかもしれないですね。著者のように必ずしも恵まれた環境で育ってなくても、野心持って上昇していこうと思っている人が昔は多かったと思います。今はよく貧困とか言ってますけど、単に精神的に困窮してるんですよ。貧困でも野心があれば、問題にはならない気がします。

 

でも逆に言うと、ある程度中途半端に満たされているから野心を持つ必要がないとも言えるのかなとも思いました。失われた〇〇年と言われて久しいですが、野心を持つ必要がないから、程々で満たされてしまっているから、上昇する必要性を感じさせないからの安定的な低成長となってしまっているようにも思えます。

 

更に本書を読んでいると、著者のいう”野心”とは何だろうなと思います。価値観の問題ですが、それが高いワインだったり、飛行機のファーストクラスに乗ることだったりするのであれば、今の価値観とは受け入れられないでしょう。ただのバブリー思考と言われて一蹴されてお終いです。

 

かように野心を正しく持つと言うことは難しいような気がします。ただ然るべき野心を持ち、そのために成長・上昇をひたすらに求めていく様は人生に取って必要なのは間違いないですし、日本そのものへの活力になると感じます。

選択の科学

 

人生は選択だというのはいつしか学んだ事実でした。人生の節目節目で選択があり、その積み重ねが今の自分である認識です。選択には良い選択と悪い選択という良否というのもあるでしょうが、人生を分ける選択というのもあると感じています。あの選択を行ったから、今の自分があり、別の選択肢を選んでいたら別の自分、別の人生が待っている。それをうまく描いた「ミスターノーバディ」という映画がとても好きです。あの選択を行っていなかったら、今の自分はどうなっていただろうかと歳を取るにつれて思ったりするものです。

ミスター・ノーバディ [DVD]

ただ本書はそんな哲学的な話ではなく、人間の選択というものがどうなっているかを科学的に分析したものです。自分はよく知らなかったのですが、「白熱教室」としてテレビにも放映された内容だそうで、すでにどこかで聞いたような話でしたが、なるほどなぁと思うものでした。ただ、科学的に選択がどのように構成されているか、ある程度はわかるかもしれませんが、本当に重要な、正しい選択がどうあるべきなのか、どう選べれるべきなのかまでは、科学をもってしても明らかにすることは難しいのかもしれません。最終章のタイトルは「偶然と運命と選択」という言葉が並んでますが、結局人知のなせるところは少ないのかもしれません。