レッドゾーン

レッドゾーン(上)

レッドゾーン(上)

レッドゾーン(下)

レッドゾーン(下)

映画「ハゲタカ」の原作です。先に映画の方を観てしまったので、内容はほとんど一緒かなと思っていたのですが、同じなのは設定だけで全く違ったお話として楽しめます。映画は時間の制限もありますが、やはり小説の方がストーリーが複合的で様々な伏線が張られていて奥深さがあって面白いです。

映画版と同様、ストーリーは中国の買収ファンドが日本の大手自動車メーカーを狙うというものです。アカマ自動車。地方に本社を置き、一族が経営の中心に携わっていると言うのは正にトヨタ自動車がモデルなのでしょう。本書が書かれたのは、まだトヨタの絶好調だった辺りで社長はまだ交代していなかったと思いますが、本書では次期社長を狙う一族の御曹司が”ぼっちゃん”扱いで登場です。功名心に駆られた愚か者として。もうけちょんけちょの扱いです。実際もそうなんでしょうか。すごく気になりますね。

主人公の鷲津は”日本を買収する”と言って買収ファンドを立ち上げたわけなんですが、実際の彼の狙いは旧態とした様々なしがらみと既得特権の壁に阻まれています。ただ名前だけが”ハゲタカ”として一人歩きしていく。やはり今の日本がイマイチ停滞気味なのも、この見えない多くの壁が鉄壁の防御を構えているからなんでしょう。

そんな彼も中国からの買収話では防御側に手を貸します。ここは愛国心が燃える設定ですね。しかし、中国側の国家を挙げての戦いに対して、我が日本国政府の役に立たない様子と言ったらまた情けないことこの上なしです。実際これも民主党であることを睨んでの設定なんでしょうか。この先将来ビジネスでは世界的な国々との戦いになっていくというのに、税金ばかり高くてこんな調子では企業もそのうち日本にはのこらなくなってしまうでしょう。

上下巻でボリュームはありますが、内容のリアリティさとストーリーのテンポの良さがぐいぐい引き込んであっという間に読めてしまいます。相変わらずの面白さですね。