日の名残り

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

こんな英国的な小説を日系人が書いたってことにまず驚かされますね。しかも彼は日本生まれなのですよね。文化的な性質は後天的に得られるってことなのでしょうか。「執事としての偉大さ」「品格」などを語るなんて、それがDNAレベルで骨の髄まで英国というものが染み込んでいなくても、可能なのですね。そして、全体が戦前・戦中の貴族やその館の雰囲気が優雅さを失わない雰囲気を持ったまま展開していくのも読んでいて楽しいです。

独白な語り口調で展開していくもの面白いですね。始めは手紙や日記だったりするのかなとも思ったのですが、最後のオチはやはりそういう展開になったのですね。最後の主人公のありようが、悲しさと幾ばくかのユーモアさを感じさせます。しかも職務に対する前向きさは「偉大なる執事」そのもので宜しいです。

しかし第二次世界大戦では、日本も多くの文化的要素を失いましたが、それは勝者であった英国も同様だったのですね。貴族階級というものについて、良し悪しは別にして失ってしまったのはやはり寂しいものですね。