作家の誕生

作家の誕生 (朝日新書48)

作家の誕生 (朝日新書48)

ずっとこの方のことをジャーナリストなのだと思っておりました。失礼いたしました。作家さんです。だって、「ミカドの肖像」読んじゃったらねぇ、所謂作家の書き物じゃないですよ。どうみても。

この本も、そんな筆者の書き物らしく、膨大な資料の積み重ねと、それが歴史においてどのような役割を果たしたのかという的確な時代認識を、簡潔なる表現にて明治以降の文学の歩みを解説してくれます。作家という存在が、元祖自分探しな人々であったりブロガーと作家といった対比もなかなか面白いです。

最後の後書きで「消えた敵」の話が出てきます。貧困・軍国主義アメリカ帝国と常に作家には対象となる「敵」がいたわけですが、70年代以降、明確な敵がいなくなったという話です。後に残ったのはただ過激さを競う私小説主義と、新たなる敵を見つけた筆者のような存在です。新たなる敵とは・・・もちろん官僚なわけなんですね。