10万年の世界経済史

10万年の世界経済史 下

10万年の世界経済史 下

下巻ともなると、ほとんどもうイギリスの産業革命の話です。こうなると10万年の世界経済史どころではないのですが、本書で言いたいことの最もたる事は、いかにマルサス経済を突き抜けて、イギリスは産業革命をなしえたかということなんです。同時期に同じような技術・生活水準であった国として、日本や中国、インドなどとも比較して検証しています。

あと、この中で一番興味深かったのは、1870〜1913年がグローバル化の黄金期であったということだと思う。ちょうど100年前にグローバル化とは!その頃に一旦各国間の格差は縮小に向かっていたのですね。現代の世界も、グローバル化で各国間の差が縮小傾向にあるのは間違いないでしょう。それが前回は、大恐慌と世界大戦で終わりを告げているわけなのです。現代の世界も大恐慌の瀬戸際に立っているし、世界大戦はないかもしれませんが、常に紛争の火種は尽きないわけです。歴史は繰り返すのか。ちょっと興味深いですねぇ。

ただ本書はいろんな疑問を提示してはいるのですが、その回答はどれもちょっと曖昧で歯切れが悪いです。イギリスが産業革命を成した理由もいろんな説は提示しているのですが、結局どれが正しいとは言い切れないでいます。最後のまとめの章も、世界は謎に満ちていて、解明しなければならない問題が多々残っているというような形で終わっているので、読む方としてはなんとなく消化不良感が残ります。