イサム・ノグチ

イサム・ノグチ―宿命の越境者〈上〉

イサム・ノグチ―宿命の越境者〈上〉

日系2世の芸術家であるイサム・ノグチについては前からなんとなく気になっていました。アメリカでも日本でも、数々の作品を残しているので、その名前を見かける度にどんな人物なのだろうかと興味があったのです。世代的には自分の祖父にあたる時代の人が、大戦をはさんだあの時期に”日系人”という立場の人間がどのようにして、あれほどの評価を得られる仕事をしてきたのか。

読んですぐに思い出したのは、”ジャン・クリストフ”でした。あの小説も一人の芸術家の一生をベートーベンをモデルに描いたものです。それに劣らぬ魅力が本書にはあるのです。孤独だが偉大なる魂。作品を制作する際の一心不乱さ。芸術家ゆえの情熱で、数々の女性と浮名を流す姿。常に様々な分野にチャレンジし、不評をも意に返さない強さ。

上下2冊ですが、あっという間に読み終えました。彼が日本とアメリカのハーフであることをキーにして、その人生を描いていきます。自身の存在の基盤の曖昧さが、芸術を作り出していく上での力の一つになっていること。

彼の仕事の集大成であるモエレ沼公園にはいずれ行ってみたいなぁ。