チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷

チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫)

チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫)

イタリア旅行のお供その2です。いつかイタリアでいうところの織田信長という話を聞いて、その生涯を追ってみたいと思っていました。中世ルネッサンス期のイタリアで、都市国家が群居していた時代に”イタリア”という国家を夢想した初めての人物がチェーザレでした。

ローマ教皇を父に持ち、その力を活かしながら領土を広げていく。その目的を達成するためならが、どんな手段も厭わず躊躇わず行使していく。あのマキアヴェッリの「君主論」のモデルともなった人物です。実際、二人には深い接点があったのですね。

実際、織田信長と比べてみたくなるのもわかる気がします。確かに取得した領地もローマを中心として主要部だけであり、京都を中心とした信長と似通っています。徹底したリアリストで冷酷とも思われることでも目的に叶っていれば実行する。そして、その代償と言える非業の死。唯一違うことは、信長は小さいながらも領主の家系であったためそれなりの家臣団が存在していたということですね。彼の死後も天下統一を目指した後継者がその中から生まれていったのですから。傭兵中心のチェーザレには、チェーザレの亡き後その夢を託せる人物がいなかったという点が残念に思えてなりません。