トリプルA

トリプルA 小説 格付会社 上

トリプルA 小説 格付会社 上

トリプルA 小説 格付会社 下

トリプルA 小説 格付会社 下

格付会社を中心に描いた小説って珍しい感じがしましたけど、ある意味でバブル崩壊後の日本を語る上では絶好の良い観点かもしれません。日本金融界の苦悩が格付けの変更と共に語られています。

格付会社を有名にしたのは、日本国債の格付けをかなり低く設定した頃に思えます。あの頃は格付会社の横暴に怒りを感じながらも、悲鳴を上げている金融機関には自業自得と思ってました。けれど本書を読んでいると、格付方法って相当恣意性が働くものですね。全く業界のことを知らないアナリストが分析していたり、そもそも本社(もしくはアメリカ金融界?)の意向であったり。そんなものに振り回されて本当に泣けてきますよ。それでも今では格付け次第で自動的に債券発行の条件が決定されるわけですからたまらないですね。

そしてそんなヘロヘロの日本とは対照的に、債券の証券化でこの世を謳歌していたのが海外の金融機関でした。特にサブプライムで有名になった住宅ローンの証券化。本書でもちょっと触れてましたけど、当初固定2年でその後何十年にも渡って消費者金融並の金利を取られるってのが凄いですね。正に確実に爆発する時限爆弾。NINJA(No Income No Job ans Assets)って初めて聞きましたが、これもびっくりでした。この状態に輪を掛けたのが、甘い格付けをした格付会社。モデルを使っての格付も、そのモデルがおかしかったら話にならんですよね。

そんな訳で、直近までの出来事を時系列で眺められるので、そんなこともあったなぁ〜的に読めておもろいです。それにしても登場する銀行名や格付け機関、著名な経営者など、実名と偽名わけて書いてあるんだけども、何か意味あるのだろうか?偽名でもすぐわかる名前だし。まぁ基本的にあまりいいことは書いてないから、訴えられないようにするためなのかなぁ。ギモンです。