タッポーチョ 太平洋の奇跡

タッポーチョ 太平洋の奇跡 「敵ながら天晴」玉砕の島サイパンで本当にあった感動の物語 (祥伝社黄金文庫)

タッポーチョ 太平洋の奇跡 「敵ながら天晴」玉砕の島サイパンで本当にあった感動の物語 (祥伝社黄金文庫)

先に「太平洋の奇跡」映画を見たのですが、気になって原作である本書を読んでみることにしました。読んでみるとやっぱり日本の映画ってダメだなぁって感じるんですよね。まず脚本が弱いんですよ。映像的には宣伝でもなんだか観たくなるようなものは撮れているのです。でも実際に観てみると、なんかストーリーが圧倒的にわからない。そもそもなんで彼らがあんな山奥に立て篭ることになったのか。しかも映画ではなんの能力もなさそうな主人公がある時から突然リーダーになった感があるのですが、本書を読んでいると満州からの歴戦の強者だったことがわかるんですよね。

本書を読んでいて一番大切だと思ったのは、もともと敵であった筆者が主人公となる大場大尉を戦後訪ねて、本を書こう、記録を残さなければと説得して、大場大尉がそれを逡巡した後に了解するところにあると思います。なぜ彼は本を書くことに同意したのか。これをまず描かなければならないと思うのです。しかし、映画には全くそんな場面がないのです。あの「プライベートライアン」だって、最後に年老いたライアンがアーリントン墓地で家族を連れて、戦時のこと述懐してるシーンで終えてます。それでどれだけリアリティが、感動が増したことか。同様に本書に書いてあったように、老いた大場大尉がなぜ本を書くことに長いこと同意しなかったのか、最終的に了解したのかを描くことは非常に重要なポイントだったはずなのです。むしろそれこそが、この本の筆者の、本書を書く理由であったのですから。

それにしても日本軍は太平洋の島々を簡単に奪われたと思っていましたが、そもそも米軍が来る前にきちんとした防衛体制を築けていなかったのですね。慌てて満州から部隊を引き剥がしてみたものの、制海権を取られた中で、ほとんどは海の藻屑と消えてしまっていたとは。武器弾薬がない中で、圧倒的物資量で挑んでくるアメリカ軍にひとたまりもなかったのは現場の兵士達は非常にやるせなかったでしょう。陸軍海軍との諍いなのか、戦略ミスなのか、サイパン陥落にて日本の運命は決してしまったのです。