大東亜戦争肯定論

結構いろんな憶測を呼びそうなタイトルですが、中身はとてもまともです。というか、日本人すべてが読むべき本だと言っても過言ではないかと思います。アジアに対する加害者的説明を否定しているわけではありません。むしろあの戦争の意義をもう一度問い直しているのです。きっとアメリカ進駐後、GHQの政策によって日本人のほとんどが忘れかけていた概念なのでしょう、それをもう一度掘り起こしたのが本書なのだと思います。

しかし文庫本で500ページ、なかなかのボリュームです。近年の本にはないくらい文字がぎっしりしていて読み応えがあります。昭和の頃にはこんなに濃密な議論が行われていたのですね。全く知りませんでした。空論を振りかざしてばかりかと思ってたのですが、全くそんなことはなかったです。これに比べたら最近の本の水増し感が半端ではないです。ぺらっぺら。

著者は青年期はプロレタリア作家から出発して、晩年期にこの議論をしているというのもおもしろいです。もう転向しまくりもよいとこで、それを自分でもきちんと認識されています。その思想遍歴は逆に純粋な生真面目さを感じさせます。しかも本書を書くにあたって相当様々な書物を読み込んでいるようです。参考文献一覧とか入れておいて欲しかったぐらいです。

このような本を今まで知らずにいたことがとても残念なことでした。きっと自分の知らない名著が他にもあるのでしょうね。先の戦争に限らず、幕末から連綿と続く歴史感については本書の認識を自分の拠り所としていきたいと思います。