古田織部の正体

古田織部の正体 (角川ソフィア文庫)

古田織部の正体 (角川ソフィア文庫)

へうげもの」で一躍有名になった古田織部について、彼が残した足跡からその業績を描いています。足跡となるのは、織部大坂の陣において豊臣方に加担したために、その業績を記した書物がほとんど残されていないためです。それを辿るには彼が残した陶芸などの茶道具やいろんな人の日記、茶会記から描き出す必要があるのです。利休も自刃していますが、織部の場合は武士でもあるため一家断絶という苛烈さです。なのでより一層手がかりが少ないのですね。

古田織部はやはり「織部焼」に名が残るように焼き物にまず目が向きますね。特にあの形や絵付けなどの前衛的な作風は目を見張るばかりです。しかし本書を読んでいくとそればかりではないということにも気付きます。なぜならそれは手前を含んだ茶道全てに及んでいるのですから。正に師匠の利休の教えである「作為すべし」を地で行っている訳です。

「茶湯ノ仕様習ハ古ヲ専二用ベシ。作為は新キヲ専トス。風体堪能ノ先達二習ベシ。其時代二逢ヤウニ思案スベシ。」

こんな織部が今の茶道を有り方を見たらなんと思うであろうか。創意が疼いて今風の茶道を新たに創作していきそうな気がしますね。