八月の砲声

八月の砲声 上 (ちくま学芸文庫)

八月の砲声 上 (ちくま学芸文庫)

もう過ぎてしまいましたが昨年2014年は第一次世界大戦から100周年ということで、ヨーロッパではいろいろと催し物が行われていたようです。我が国では第一次大戦と第二次大戦ではだいぶ取り扱われ方が異なっていて、第一次の際は勝ち馬に乗ったというか、火事場泥棒的にドイツの権益を搔っ攫っただけなのであまり話題には挙っていませんでしたね。基本的に第一次大戦は欧州の問題なのでしょう。

本書はそもそもの発端であるあの有名なサラエボの事件については全くに近い程触れられておらず、それ以前の各国の動向などについて詳細に描いています。そもそもあの事件に関わらず当時の国際状勢はもはや戦争を待つのみと言ってよく、事件は単なるきっかけ、口実に過ぎないものだったのですね。あの事件から戦争までの流れは正にドミノ倒しに似ています。もうバタバタバタっという具合です。当時新興国であったドイツの鼻息の荒さは、凄いですね。なんだか最近の中国を見ているようです。もはや雌雄を決するは戦争しかない!という意気込みと自分の国は蔑ろにされているという被害妄想は今のあの国そのままです。

しかし本書を読んでいると当時の政治家や将軍達の多くが無能そうに描かれているように感じます。曖昧な意思のまま、何かに引きずられるように戦争に突入していこうとしていて、実際の動きはなんだかとてもお粗末です。確かにヨーロッパを南北に渡って包囲陣を張るなど非常にスケールが大きいのですが。本書でも度々挙っている日露戦争第一次大戦のリファレンス的なものでしたが、「坂の上の雲」を読む限り、当時の日本の政治家や将軍達は勝利のために粛々とやるべき事項を実施していたのですね。これこそが勝因だったのでしょう。ただ一つ異なっているとすれば、国家総動員制となり、終わりが見えない戦いの始まりだったのかもしれません。