複合戦争と総力戦の断層

今年は第一次世界大戦が始まって100年経った年ということで、メディアでも記事などよく目にしました。日本は欧州ほど直接戦争に加担したわけではないので、それほど国民全体として興味があるわけではないですが、これを機会に何冊か読んでみることにしました。

本書は副題にあるように、日本にとっての第一次世界大戦となります。戦闘行為としては対独戦とシベリア出兵が日本にとっての第一次世界大戦となるわけです。2つ共中国やシベリアに対する権益を取るがために意図されており、必ずしも必要ではない戦いではありましたが、権益や領土を広げるために戦略的に行われているのは間違いありません。外交交渉についても非常に積極的で、今とは大きく異なるように感じます。今からすれば強欲と言われても仕方がなく、多くを敵に回し過ぎで、稚拙であったのではないかと感じてしまうのですが。

当時はまだ日英同盟が有効な時代でありましたが、ロシアとも(日露戦争後ですが)比較的友好を保っていたというのも新しい発見でした。そして中国やロシアの権益を巡ってアメリカとやりあっていたのも注目すべき点です。要はアメリカがアジアの権益を巡っていろいろちょっかいを出してきていたのです。アメリカも目的を果たしていないだけで、強欲ぶりで言えば日本と変わりありません。そして、この時点で既にアメリカとの戦争が予期されていたというのは、注目すべきことです。

世界大戦という極地的な戦闘行為だけでなく、国家全体での総力戦が今後の戦争形態と捉えられてきたのもこの戦争からというのも見過ごせないですね。第二次世界大戦における国家体制もこの時期を得て、次第に整備されていったわけですから。

歴史というのは、突然何かが起こるということはないわけで、第二次世界大戦の前提条件がいくつもこの段階で現れて来ていたというのを改めて感じました。同時に、あの戦争も避けられうるものであったということも感じます。当時の人々が何も特殊であったわけではなく、現代とあまり違いはないわけで、我々も戦争に向かわないように要心しなければなりません。