- 作者: 堤未果
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/01/21
- メディア: 新書
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一番容赦ないと感じたのは人生の根幹である教育・住宅・健康を狙い撃ちしているところです。中流としてそれなりの人生を生きるなら必要不可欠な要素ばかりです。それらを有無を言わさぬ手口で狙っていきます。そして、最後はそうやって下流に沈みかけた人々を刑務所ビジネスで追い落とす。でも、こうやって中間層を潰していって残るのは国家の荒廃だけだと思います。国を支えるのは何より安定した中間層があってのもので、これは歴史が証明していることです。こんな政策が改善されずに猛威を振るっているというのは今後のアメリカ社会を悲観させますよ。
最近の日本は左寄り傾向が強く、かつての市場主義の声も薄れてきましたが、アメリカでは変わらず市場主義が大手を振るっているのですね。教育ローンや刑務所経営なんかも民営化です。日本では公的機関である医療保険も始めから民間。住宅ローンだって、債券化してまで猛烈に貸出を行う。まぁこちらはさすがにやりすぎでさっさとサブプライムで破綻してしまいましたが。そうやってそもそもそれほど儲かるはずのないこれら産業で、莫大な収益を上げているのです。結局富を得るのはそういった会社の経営者や株主達。利益こそが一番評価される社会なのです。これが問題であることはは明らかでしょう。
何でもアメリカ大好きな日本でも、サブプライムや消費者金融まがいの教育ローンなどを受け入れてこなかったのいうのは、やはり良心が咎めるような仕組だからなのですかね。それだけでも、アメリカであるより問題は多々あれど今の日本の素晴らしさを思わずにはいられません。