フォールトラインズ

フォールト・ラインズ 「大断層」が金融危機を再び招く

フォールト・ラインズ 「大断層」が金融危機を再び招く

もうあれから4年近く経とうとしております。そろそろ経済学的な評価がきちんと確立されていい時期だと感じています。そんな中で本書、フォールトラインズはまさしくうってつけなのではないかと思えます。

サブプライム問題というものが、単に投資銀行の欲望のみで発生したわけではないということ。アメリカの格差問題解消のための政治的判断、ドイツや日本の貿易黒字、バブル崩壊後の日本の過剰流動性、鼻の効くアメリカのバンカー達はそれに乗ったまでのことです。様々な銀行規制の中で、抜け道として証券化というものが適していたということもあるのでしょう。そういった様々な歴史的流れを適切に本書では描き出していきます。特にアメリカの国内事情については、あまり触れている本がなかったのですが、本書では社会格差に基づく様々な問題について明確に述べられています。そもそも経済学というものが富の配分ということを命題として掲げている訳ですから当然なのですが、昨今ではそんあ根本的なことも忘れがちなので、非常に重要なことなのではないでしょうか。そういう意味で今後のアメリカは大変です。アメリカンドリームという幻想を打出す打ち出の小槌がなくなってしまったのですから。

本書ではこれらの構造的問題を明らかにすると共に、それらの解決策をIMFなどといった国際的機関の力に期待しております。実際著者もそのエコノミストとして、国際機関の無力さを感じていながらも、他にそのような行動を起こせる組織が思い浮かばないのでしょう。それが辛い現実ということで、本書で問題視された大断層がこれからも我々の経済に危機を再び起こして行くことは間違いないでしょう。米国債のデフォルト危機も間近ですし。