新日本の階級社会

日本でだんだん格差が広がってきて固定化し、格差社会から、更に階級社会に移りつつあるというのが本書の趣旨です。確かに貧困が広がって、格差が生じているのは確かなのでしょうが、大凡この手の貧困ビジネス本は眉唾付けて読む必要がありますね。

まずいろいろ数値例を挙げている貧困が広がっているという主張をされているのですが、本当にその数値で広がっている証拠となりうるのか怪しいところが散見されます。俄かには信じがたい。80年代ぐらいまでの総中流意識があったのは確かなのですが、それがたまたまであって、歴史を通じても、世界的にも格差が大きくなるというのは、まぁ常なのかなと。但し国が強くあるためにはしっかりした中流階級の存在が必要なことは確かなので、それを保つ政策というのは必要だとは思います。でもそれでも貧困層は出来てしまいますよね。

本書の内容が信じられないのは、階級と支持政党、特に自民党と紐付けたり、ネトウヨと結びつけたり、あげく防衛費は無駄だから貧困対策に回せ的な記載があったりと、まぁそっち系の人なんですかと読む気を無くさせてしまう点にあります。自民党は金持ちの味方的な記載ですが、むしろ民主党やリベラルと自称されている方々の方が、自民党を上回るようなリベラル法案を推進出来ないことの方が問題ではないでしょうか。

格差固定化が問題だとすれば教育格差をもっと論じる必要があると思います。究極的には固定化の原因は教育にあるのは間違いないのです。ただ本書に書いてあるように教育機会に問題があるのではないと思うのです。高度な教育を受けるために必要な様々な情報を受け取れるか否か、そこにかかってるのです。単に高校や大学を無償化したり奨学金増やせばよいというのは短絡過ぎます。

そしてもっと大事なことは世代間格差であります。若年層を安い給料で使ってしのいでいたうちはよいのですが、労働力不足でそうも言ってられなくなりました。それを誤魔化すために移民をなし崩し的に認めつつある点になんにも考慮していません。これはあらたな貧困と差別を生み出し、将来的に民族問題ともなっていく可能性を秘めています。

本書を読んで思うことは日本で格差社会が問題となるのは、リベラルと自称する人達の想像力の欠如と思い込みによる自己満足的な解決策しか出来ないレベルの低さに依るものなのだなと感じてしまいます。