大不平等

大不平等――エレファントカーブが予測する未来

大不平等――エレファントカーブが予測する未来

過去30年において、世界の富裕層から貧困層まで横軸にならべて、所得の上昇率をグラフにするとどのような形となるか、それが像が鼻を上げているような形であるエレファントカーブになるとあります。鼻の先にあたる層は、元々金持ちである人々。つまり金持ちは余計金持ちになっているわけです。胴体部分の人たちは中国など昔発展途上国と呼ばれた人々がグローバル化して所得増大している様子がわかります。そして我々に取って大事なのは鼻の最下点、口の上辺りにあたる場所、つまり上昇率が低い場所にあたる層です。つまり先進国の中間層である人たちが一番割りを食らって低成長であったのが明確にわかる点です。なるほど、わかりやすい。今世界の先進国でトランプに代表されるようなポピュリスト政治家が持て囃される理由ともなっているわけです。中間層の没落。

しかし、本書はこんな面白い知見を与えてくれたにも係わらず、この先進国中間層の没落のテーマにはほとんぞ触れず、国による格差、国中の格差問題と更に格差を減らすにはどうすべきかという論点に移ってしまいます。残念。つまりフラットな世界となれば、更に先進国中間層は引き下げられ、没落していくに任せるしかないということなのでしょうか。

日本も比較的均一で、格差が少なく超富裕層というのはそれほど多くいるわけではないのですが、今後はその流れに拍車がかかるということです。しかも、それを解消する動きが起こる可能性は少ないのです。持てるものは余計持てるものに、お金がある人は知識も経験も教育を与える余裕もあるわけですから、次の世代で必要とされるものを適切に子供達に提供することが出来るわけです。それを行うためにはそれなりのコストもかかるわけで、少子化にも拍車がかかります。それに気付いてそんな子供世代を作りたくないと思う貧困層の人達もいるでしょう。

結局はこれらをわかったうえで、自分と自分の家族を守るよう手立てを取っていくしかないのですかね。適切な教育を与えて、適切に稼げる手段を選ばせるように。単に衣食住を与えてれば良いという時代は過去のものなのです。