不死身の特攻兵

 

 何回も特攻を命じられながら、生きて帰ってきた方の物語です。あの時代にそのような方がいたのですね、そんなことも知りませんでした。本書を読んで改めて知ったのですが、特攻自体に命中精度を高める意味合いというのはほとんどないということ。逆に優秀な搭乗員をムザムザと死なせ、飛行機も失うための損失の方が大きいということです。撃沈に至ったのは驚くほど少なく、かつ米軍の対策もあっという間に施されて、初期以降の特攻はほぼ無駄死にであったと。

 

それにしても、特攻を命じた軍の上層部の卑劣極まりなさは半端じゃないですね。何がなんでも自分が命じたことはやらせるという、人の命すらなんとも思わない、かつ上にしか目が向いていないという、部下には特攻を命じていながら逃げまくる司令官も描かれています。なんともありふれた話のようですが実在なのですよ、これが。しかし、まぁ読んでいて思い出されるのは、私の上司です。全くそのものです。確かに優秀で、上の人には絶対服従なので、覚えもそれなりに目出度いのでしょうが、部下の前では絶対自分が正しいというスタンスであり、命令したことは絶対に行えという正に軍隊スタイルそのままです。

 

そんな中で、ノラリクラリと自分スタイルを通せた主人公は偉いです。そんな人もいたんだなと。本当に昔も今も変わらないんだなと思います。日本人の人間性も。月並みだけれども、サラリーマンであったって、上司の命令が絶対とはしてはいけないんだなと思うのですよ。