- 作者: カーメン・M ラインハート,ケネス・S ロゴフ,Carmen M.Reinhart,Kenneth S.Rogoff,村井章子
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2011/03/03
- メディア: 単行本
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本書では世界各国の銀行危機、不況、政府の対外的、国内的デフォルトなどを取得可能な限りのデータをもとに分析しています。実際本書を手に取るとかなりの分厚さで、ちょっと読むのにひるみます。上下巻に分けた方が良さそうに感じますが、2/3は索引や元データの表記に充てられているので分割はしないようが望ましいのでしょう。ただなぜか文字が大きく、余白も多めでなんか水増ししているような気分になります。最近の年寄り向けに転じた新聞みたいな構成です。ちょっと頂けません。
興味深いのは銀行危機と金融政策の緩和はかなりの相関性があるということでした。正に今回の危機も証券化やCDSなどデリバティブ手法がことの発端であったのは否めないわけです。金融工学や経済理論の発展により、銀行危機や不況は回避出来ると考えられて来たのは誤りであったわけですから。そういう意味で、今国際的に金融への規制が強まってきているというのは正しい道筋なのかもしれません。
まぁあとは日本への評価でしょうね。日本の92年からの不況は、政府の対策が後手後手に回ったからだという評価を下してますが、実際先進国でこのレベルの危機を迎えたのは戦後初であるし、景気刺激策を含めた政策対応も取られたことはなかったということです。最近はよく日本化と言われていますが、日本の今までの経緯を踏まえても、結局多くの国で辿り着く先は同じことになってしまった訳です。トップランナーであった日本が多少躊躇しても、批判される云われはないと思うんですけどね。しかもアメリカも、直近ではEUも、金融不安やデフォルト危機を世界中に拡散しているわけです。日本だけですよ、堪え難きを耐え、忍び難きを忍んで、なんとか不況を国内だけで留めて20年もやってきたのは。しかも相変わらず理解されない。もう少し尊重されてしかるべきだと思うんですけどね。
そんな訳で、本書を読んでみると国家のデフォルトなんってよくあることのように思えて来ます。ちなみにギリシャなどは歴史的に見ればデフォルト状態の方が長かったようです。そうなのか、ならばさっさとデフォルトしてしまえば良いんですね。そしたらEU内の銀行がまた倒産して、更なるお祭り騒ぎが続いてしまうんですけども。