父が娘に語る経済の話

 

 題名や帯に煽り言葉がいっぱい散りばめられていて、なんだかいろいろ修飾語が並んでいて、ちょっと敬遠してしまいます。ただそんな見た目とは裏腹に経済の本としてはとても簡潔でわかりやすくって、しかも幅広く網羅しており、ちょうど中高生ぐらいの子供がいれば、この本を読ませてあげたいなと感じました。

 

著者はギリシャ経済危機の際の財務大臣を務めた人物ですが、あの危機を乗り切ったと同時に債務帳消しを訴えたと記憶にあるので、胡散臭いのではとちょと疑いながら読み始めましたが、全くそんなことはなく、真っ当な内容でした。

 

ただそこはギリシャ共産主義の思想が強く生き付いていて、そもそもの本の出発点は「なぜ格差というものがあるのか」です。その疑問から全ての経済活動の説明が生まれて行くのです。人類が誕生して、マーケットが生まれます。マーケットが生まれると余裕資金が出来、さらにそれを運用することで利息と借金という活動が出てきます。これがそもそもの発端で、それらを効率的に動かせるように銀行が登場し、経済活動が活発になると機械化へと更に効率的になるよう進んで行くのです。

 

銀行は更なる高度な金融活動となって行くのですが、結局これが曲者で危機を生み出す要因ともなり得ます。しかし、人間の根本となるのは幸せ追求だとなればこの流れは止めようがないのです。その大きな矛盾は問いとして本書でも問われています。

 

ギリシャ人らしく、「満足な豚より、不満足なソクラテス」と締められてますが欲を満たすだけでは幸福にはなれないという結論に達するのですが、言葉では書けれども、欲を追求してしまう人間の性はどうしようもないのかもしれません。