金融に未来はあるか

最近金融業界、特に職業としての金融が終わりに近いような論調の本が多いですが、本書もその一つです。しかし、本書が伝えたいのは、業種として間違った方向に進んできてしまったいる現状に対して、本筋の金融業として進むべきという点を論点としているところです。

本書の前半では現在の金融業界のデタラメぶりをこれでもかという程挙げ連ねて来ます。ちょっとウンザリもするのですが、正直その通りだとも思います。学生の頃、先進的で高度な金融に魅せられてこの業界に入ったのですが、実際はそんなものはなかったことに漸く気が付いた自分がいます。今だに日本は欧米の後追いばかりなのですが、そんな先進性のまやかしは2008年の金融危機で終わりと告げたのですよ。そして、その後構築された数々の規制は、まやかしを更に誤魔化すためのハリボテでしかありません。

本書では、その後進むべき道としてスチュアードシップなるものを挙げていますが、金融庁が積極的に進めているフィデューシャルデューティーに影響を与えているものです。私が所属する金融機関でもその耳慣れない条文が出来て、それが経営上最重要みたいになってきてますが、なんというか本書を読んでみると、ちょっと違うのではないかという気がします。

それは単に”顧客重視”的な単純な話ではないのです。顧客満足とも違うのです。もっと単純なのですが、そもそも目指している方向が違うのではない気がします。既存の組織、業務の上に継木して済むものではなく、根本的に改める必要があるのです。例えば、トレーディング業務などはなくして、資産運用会社ぐらいシンプルにその業務を専念する。運用だって、国債と住宅ローンぐらいに絞ってしまえと。それだとこの低金利下、とてもやっていけないのは、地銀の苦境を見れば明らかなのですが。

そしてまぁ経営コンサル的な視点が追加されたのでしょうが、それでもメガなどはお題目唱えるだけで終わってしまいそうだと思うのは私だけでしょうか。