野生化するイノベーション

 

野生化するイノベーション: 日本経済「失われた20年」を超える (新潮選書)

野生化するイノベーション: 日本経済「失われた20年」を超える (新潮選書)

  • 作者:清水 洋
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/08/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 日本経済がこの20年、失われた時代となりつつある点についてイノベーションという観点から解きほぐそうというのが本書の趣旨です。

 

前半は著者の研究分野であるイノベーションについて、特に「野生化」という観点を踏まえて説明しています。イノベーションの歴史的流れなんかから記載しているので、本題である日本が停滞した原因を知りたいのであれば後半だけ読めば良いかもしれません。ちなみに「野生化」とはアニマルスピリッツのことで、特に企業内ではアニマルスピリッツが抑制されがちというのが、前半までの内容です。

 

後半はそれを受けて、日本経済がなぜ停滞期に入ったかをを論じています。その要素として、資本量、労働力、生産性の3つとなりますが、イノベーションというのがこの生産性に置き換えられるというものです。結論としてはオイルショック以降時代と共にどれも効き目が悪くなってきているというものですが、でも資本量なんか今の時代ジャブジャブに供給されているわけで、どこで目詰まりしてるのでしょうか?

 

イノベーションの効き目が悪くなってきたことの原因として、本書では年功序列を始めとした、人材の流動性の硬直化を挙げています。大企業に囲われてきた人材が、スピンオフやスピンアウトのような形で外に出てこなかったのが原因だと。しかし、それでも気になるのが例えばこの20年で電気業界は多くの企業が倒産やリストラが相次いで、人材が市場に大量に供給されたにも関わらず、新企業の発展はほとんど見られませんでした。結局サラリーマン根性なのか、中韓企業に雇用されてお終いだったのでしょうか。それとも銀行やスタートアップ支援が貧弱で資本がきちんと供給されなかったからなのでしょうか。色々まだ疑問が残ります。

 

本書のタイトルにある失われた時代を克服させるために、イノベーションが必要と著者は書いています。そして日本がイノベーションにおいて不得意ではないとも。しかし、それではどのように、どういう形で提供されれば良いかの具体策まで至っていないのがとても消化不良です。経営学トップランナーが日本の成長戦略の抜本的な見直しを提言と説明書に記載されてますが、自分には十分読み取れませんでした。