NUDGE 実践行動経済学

 

本書は完全版ということで、2008年の初版の改訂版となります。ただし著者の主張によるとかなり多くの部分を修正しているのでほぼ新作ということです。

 

ところどころの記載を読んだ気がしたのできっと2008年度版も読んでいるのだと思います。もう15年も前になるのですね。あの頃は面白い学問が出たのだなぁと思いましたが、15年たった本書は正直それほど研究に進展があるようには思えなかったです。概念としては新しいものが出たわけではなく、意味の精緻化や昨今の情勢の変化に合わせた具体的な事例の適用方法について研究が進んだ内容をアップデートした感じです。

 

本書の内容を簡単に言えば、人々が選択を行うシチュエーション、特に公共的な場面において、その選択肢や順番をどのように提示するか、デフォルトを何に設定しておくかというデザインの問題なのだということになります。本書でも言及されてますが、私も大学時代に読まされた古典「誰のためのデザイン」が結局のところ重要なのだと感じました。

 

 

見ただけでその後の行動をどうしたら良いかすぐにわかる、逆に間違えようのないデザイン。カッコ良さだけを求めてはいけないのですよ。若気の大学生にはいい刺激であり、デザインの奥深さを感じさせてくれた一冊でした。本書ではそれを経済的合理性の観点から見直した感じですね。ただほとんど海外の事例であり、細かく読んでも実際関係のある話ではないので日本での研究事例の本があったら良いなと思いました。結構ちゃんと考えられているような気がするのですよ。