- 作者: 河口慧海
- 発売日: 2012/10/05
- メディア: Kindle版
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更に内容も圧巻です。「旅行記」なんて生易しいタイトルですが、これは「冒険記」です。本書でも何回か死線を彷徨っていますが、たぶん僕が同じことを行ったら始めの一冊目くらいで死んでます。実際同時期にチベットを訪れようとした日本人でも、行方不明の方がいるくらいですから。
なぜチベットへの旅がこれほどにも艱難を極めたかと言えば、当時のチベットは鎖国をしていて普通は入れなかったからなんですね。それに加えて現地人の野蛮な性質というのか、強盗殺人くらい屁でもないというのが、民族的風習が一般的だったようです。本書内でも何度か強盗にあっています。しかもあまり信用がならん感じの人々です。それでもなんとか切り抜けられたのは、主人公が坊さんであったからなんですね。あちらではもう崇拝の対象ですから。ちなみにチベットのお坊さんは、日本で言えば延暦寺の僧兵みたいなもんで、生臭坊主というのか、まともに修行している人ばかりではなさそうです。しかし、その中でもごく少数の人が神懸かり的な神秘性を秘めた仏性を取得して登場します。
そしてもう一つがチベットという高所であるがための高山気候でしょう。極寒で大雪とか普通です。その中で大荷物を背負い、旅するのは生半可ではありません。しかも食事はほとんどが麦焦がしという麦を練って食べるだけという粗食。多分僕なら1日持ちません。しかもこの辺の人々の家が、テントみたいなものというのも凄いですね。よくこんなところで生活出来るなという感じです。でも度々書かれていますが、風景はとても素晴らしいらしく、挿絵などでも描かれています。とても壮大な感じなのでしょうね。
本書は出版された当初からとてもセンセーショナルだったようで、今でもきっと当時の風俗などを研究する上で、一級の資料なのではないでしょうか。とにかくこれだけの内容を、帰国後に淡々とかつ、詳細に描く著者に全ての面で脱帽です。