- 作者: 高田橋範充
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2010/05/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 2人 クリック: 32回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
本書のスタート地点はIFRSのフレームワークです。IFRSを解説している本ならば大抵載っていることですが、この本ほど重要視してる本はなかったと思います。フレームワークとはIFRSにおいて、根本的理念となるのです。つまり本書はフレームワークを根本とした原理原則主義的思考が貫かれているのです。そもそもこうあるべきだという。今回新たなる発見といえば、フレームワークから言えばそもそも貸借対照表があれば良い訳で、損益計算書ってほとんどいらないくらいのものだということです。この観点から言えば、毎期末に資産を棚卸しして、前期との差を見れば利益が算出可能ということです。なかなか過激ですね。ってことは仕訳すら必要ではないわけです。
ではなぜIFRSが既存の当期純利益にその他包括利益を足したものといったようなおかしな算出方法をするようになったかというと、米国会計基準とのコンバージェンスの影響ということです。つまり、コンバージェンスすることで原則からよれて来てしまっているんですね。納得です。
IFRSの目的として、この財務諸表を見る対象者を限定したのは正しいと思います。つまり各国税法との決別です。ただそれを差し引いてもこの会計基準が良いかどうかはまだ議論の余地がありますね。まぁほとんどの人は基準とか原則とはどうでもいいから、どうすればよいか教えてくれよって感じだと思いますが。財務諸表って単なるツールなんですけど、ツールにそれ以上の原則論とか求めだすからややこしくなるんですよね。
いつもながら日和見主義的で情けないことですが、今回IFRS適用延期したのも、結果的には賢明なのかなと感じます。ムービングターゲットなどとかっこいい名前付けてごまかしてますが、これからも毎年なんらかの基準の変更が発生してくるのは間違いありません。そんなものにお付合いする必要もないのです。しかも始めに導入を決めた欧州の会社でも全面的に移行しているのは少なく、既存の基準に継ぎ接ぎしてIFRS適用しているのがほとんどだということです。どうせ日本の会社がやり始めたら、何も考えずに多大な金と労力かけて全面移行しちゃうオバカな会社が続出してしまうのでしょうね。どうかと思いますけど。