バカと無知

 

橘氏の著作は主に人生の生き方的な解説と本書のような社会科学、特に心理学をベースにしたものの2つがあるように思います。

 

本書もまた煽るようなタイトルです。もともと雑誌のコラムを編集したものなので内容は個々の章ごとに異なってくるのですが、言いたいことは前書きと後書きに要約されています。人は物語の中で生きており、それが紡ぎ出されるのは自分が知っていることでかつ認知出来るものの中でのみとなるのです。知らないこと(=無知)、信用出来ない、理解出来ないこと(=バカ)の壁は大きく、それが世間との認識と大きくズレていようがそれは世間の方が間違っているだけであり、本人には関係ないのです。

 

私はずっと家族というのは物語であり、それを紡いでいく母体となるものだと考えていました。だからこそ連帯性が生まれ、いずれ思い出として残っていくのだと感じています。そしてそれは生きた証そのものなのです。近年独身者が増え、時に高齢独身者からは「狂いそうになる」というコメントなどを見ることがあります。これは一つには物語性の欠如と、もしくはおかしな物語に侵食されそうな状況にあるところを示しているのではと考えています。

 

ネットの世界のおかしな物語(=陰謀論)から離れ、健全で身近な物語を育んでいくことが大事だとは思うのですが、未婚率が高くなっていく現状はなかなか望みが薄いように感じます。