半導体戦争

 

半導体をめぐる各国の戦いです。80年代までの快進撃は影を潜ませ、日本の存在感は台湾韓国の後塵を拝していますが、それでも製造機器、原料の分野ではなんとかこの半導体サプライチェーンの一角で踏みとどまってはいます。巷ではたまにネタとなってますが、本書を読めば日本が半導体の栄光から滑り落ちたのもアメリカの匙加減だったということがわかります。つまり半導体の生産競争というのは戦争そのものなのです。

 

別の話として、半導体は民生品分野で当然必要不可欠な存在ですが、その前に戦争に欠かせないパーツであるということを踏まえておく必要があります。冷戦の終わり、そして湾岸戦争で見られた誘導ミサイルの衝撃は今後減じることはないですし、今後も武力向上の影には半導体パワーの向上は欠かせません。ウクライナ紛争でもロシアは半導体の調達に苦労しているようで、そのため誘導ミサイルが生産出来ないでいるという話も聞きます。本書の帯に記載されてますが、半導体は現代の「戦略物資」そのものなのです。

 

現在正に見える敵として中国の存在が浮上しています。彼らは半導体サプライチェーンの全てを自国に奪おうと画策していますが、その途中で流石に意図を見破られて、今アメリカの猛反発大攻勢を浴びているところです。日本も先日中国への輸出規制を課しましたが、珍しく動揺しているところを見ると相当ダメージが大きいのかなと見受けられます。日本も今更ながらに熊本にTSMCの工場を誘致したり、北海道に新しい半導体会社を作ったりしてますが、その前にエルピーダとかウェスタンデジタルと統合しようとしているキオクシアとかをもっとサポートすれば良かったのにと思ってしまいます。本当に対策がその場しのぎの弥縫策ばかりで悲しくなってしまいます。やはり経済安保という考え方は今後もっと真面目に考えないといけないと思わざるを得ない一冊でした。